復古酒は不思議なお酒だ。元禄時代の製法を再現して開発されたもので、現代の日本酒と比べて、使用している麹の量がとてつもなく多い。絞った後に残る酒粕は、「板粕」と呼ばれ、絞った圧力で板状になる。ところが復古酒の粕は、ぼろぼろと崩れてしまう。そして、その麹の甘さで、とても甘いお酒だ。(+50くらいだという)甘いのだが、甘さが口に残ることがない。なんともすっきりとした飲み口で、日本酒らしくない。ロックで飲むと尚すっきり。だから、日本酒が苦手な人にも味わって欲しい、そんなお酒だ。
つまり、開発された背景とその重厚感のある名前に見合わず、とても飲みやすくて現代的なお酒なのだ。
実は個人的にとても好きなお酒で、リニューアルの話をいただいた時に、とても嬉しかった。しかし同時に、このお酒のキャラクターをよく知っていたがゆえに、とても難しい仕事だと思った。名前と実態の乖離したイメージを、どう繋げるかが課題だったからだ。
さんざん考えた結果、導き出した答えは「言葉で伝える」だ。名前を変える、という案も了承を得ていたが、自分のように今までのファンも大切にしたかった。コピーライターの鈴木拓磨は、まるで昔話の語りのように、この歴史ある製法でつくられた現代的な酒の特徴を表現してくれた。
ラベルや箱は、なるべく癖のないすっきりとしたものにした。コピーを読ませたかったし、バランスを調整し直した「復古酒」の文字をちゃんと見せたかったのもある。
グラフィックデザインはコミュニケーションに深く関わるデザインだ。華美な演出や表現は、その一部に過ぎないと考えている。必要なのは「ちゃんと伝わるか」だ。
2022.8
AD: ゲンママコト
D: ゲンママコト、わたなべゆき
C: 鈴木拓磨
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