男山株式会社

諸事情

商品開発と商品名

コロナ禍で生まれた商品。
多くの業種が打撃を受けたが、特にお酒は飲食店との関係が深い、休業要請や時短営業の影響で、瓶に詰めたが出荷できずに大量のお酒が余ってしまった。多くの酒蔵は特別価格として、割引き販売に踏み切った。しかし男山では、既存の商品を安く売ることで自社のブランド力が落ちてしまうことに抵抗があった。そこで、余ったお酒をタンクにもどし、ブレンドして安く販売することに。

はじめは「規格外」や「訳あり」といった商品名が検討されていたが、飲んでみるととてもうまい。もちろん杜氏がおいしくなるようにブレンドした成果なのだが、品質にも味にも問題がない商品にネガティブな名前をつけることに抵抗があった。「これは名前が大切だ」と考えてコピーライターの鈴木拓磨にネーミングを依頼。上がってきた案が「諸事情」。コロナ禍だからこそ伝わる、発明とも言えるネーミングだ。

ラベルデザイン

安い商品は、安かろう悪かろうというイメージが付きものだ。まして、高品質でうまい酒がそんなに安く売れるなど、何かあるに違いない。そう考える人に「安い理由」を視覚的にも伝える必要があると考えた。
そこで、必要最小限の情報のみをラベルに記載し、機械で貼れる最小のサイズにまとめ、まるでラベルが無いと錯覚するようなデザインにした。
想像してみてほしい。蔵元などで、ラベルの貼られていない詰めたてのお酒は、なんだか美味しそうに感じるものだ。また、ラベルを小さくすることで、そのコストも削減していることを伝えることができる。「美味しそうなお酒」と「安い理由がわかるお酒」を同居させる狙いだ。

発表から地元メディアにも多く取り上げられ、純米吟醸は発売日前に自社ECサイトの予約分だけで完売してしまった。あまりの売れ行きに、当初はクレーム対応に追われるなど大混乱だったが、派生でアメリカに出荷できなかった純米酒(諸事情USA)、純米大吟醸、スパークリング日本酒など生まれ、ここから数年、「諸事情」は男山を救う商品コンセプトになった。

諸事情はコロナ禍終息と共に役目を終えたが、年末に安いお酒を出すとよく売れるということと、日本酒はブレンドするとおいしくなるという事実は、次の商品開発に生かされることになった。

2020.6
AD: ゲンママコト
D: ゲンママコト
C: 鈴木拓磨

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